カイトチカの日記

Life Solution Energyとして、エナジャイズする記事をお届けします

働くこと。もう一歩進めて、自分の人生を考えよう!

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2016年6月27日の朝日新聞天声人語

読んだ後に、少し前から感じていた違和感が一層強くなった気がしました。

当然のことながら、内容が間違っっているということではありません。

未だに、不本意に退職をしなければいけない女性がいる。企業が一旦辞めた人を再度受け入れる制度を作ったなど、記事は「女性が働き続けること」について応援する内容で、それは歓迎すべき流れです。

加えて、朝日新聞は「子育てをする女性を応援する」という立場をいろいろな場面で強く出されているので、それは本当に素晴らしいことだと思っています。

www.asahi.com

一方で、子どもを育てながらでも、キャリアを途絶えさせてはいけないと信じて、奮闘してきたこれまでの自分の経験を振り返り、多くの失敗も含めて、後輩たちに何か伝えたいと思っている立場からすると、この流れが何とも周回遅れの感がするのです。

問題を発信する視点が15、6年前から、ほんのわずかしか進んでいない感じがするといいますか…。

私はこれまで、企業の中で、「女性のキャリア(実際には男女問わずですが)をサポートする人」として認識されてきたように思います。

「仕事を続けることは自分のエゴではないのか?」

「管理職になることの意義がよく分からない」

と、悩む後輩たちの相談にも、公私にわたり積極的にのってきましたし、人事という立場で働く女性たちのための制度やネットワークづくりのためにも奔走してきました。

そんな私に、何人かの人から、

「カイトさん、やっと多くの人がこのテーマに関心を持つ時代が到来したのに、近頃、沈黙していませんか?」

「今こそ、いろいろ発言したり、行動してくださいよ!」

という本当にありがたいお声がけをいただいております。

どんなことが女性のキャリアを後押しするのか?幸せとは何か?

みたいなことについて、語り出すと一晩あっても足りない位に、私はいろいろ語ると思いますが。

いただいたお声やらを踏まえて、なぜ、天声人語の内容に違和感を感じてしまったのか?今の時点での自分の考えをまとめておきたいと思います。

まず、女性自身の課題を段階的に捉えてみました。 これは、かなり私流の見方であることをあらかじめ、お断りしておきます。

女性たちは、とりあえず初期的な段階(ver.1.0)として、「間違った理由で、キャリアを中断しないこと」が大切です。

 * 女性は本来、家庭を守ることが重要な役割だから

 * 小さい時に子どもは母親を必要とするから、仕事よりも子育てを優先するべきだから

 * 保育園、学童クラブ、シッターさんなど他人に子どもを預けることは、かわいそうだし、子どもの教育上よろしくないから

 * 夫が転勤したら、妻が自分のキャリアを諦めて、ついていくのが当たり前だから

 * 家族の介護は女性の役割。仕事を辞めるのは仕方ないから

この段階は、自分の母親世代や世間から、意識、無意識的に刷り込まれた「女性としてのあるべき像」とせめぎ合うことを意味しています。 心理的な囚われや刷り込まれた価値観に対して、自分が罪悪感を感じる必要は無いということに気づくことです。

少なくなっているとは思いますが、こういう理由で本当は続けたい仕事を諦めるのは、やはり違うと思います。

辞めるのを決める前に、自分や周囲の人たちをこの「囚われ」から解放して、その上で、家族でよく話し合ってから、出来る限り後悔のないような解決策を見つけて欲しいものです。

続いて、次の段階(ver.2.0)は、「その当たり前を疑うこと」です。

 * 仕事と家庭をキチンと両立させてこそ働く女性として一人前だ

 * 子育てを含めた家のことを忙しい夫が手伝ってくれている

 * 時間短縮勤務は女性がやるもの、女性のための制度

 * 時間短縮勤務をしなければ、仕事と子育ては両立が難しい

 * 子供が具合が悪かったら、まずは母親が対応する

 * 仕事と子育ての課題は両親を含めた家族内で対応しなければならない

 * 子供がいるのに、管理職を引き受けたら大変だ

 * 管理職になることには興味がない

 * 女性はサポート的な業務が向いているし、誰かの指示で動く方が楽だ

 * 子持ちですが、仕事はちゃんとやっていますとアピールしなくてはいけない  

これは、極端に聞こえるかもしれませんが、家事や子育て=女性の仕事では全く無い、という前提から入る必要があります。

仕事と家庭を、原則自分でやりくりして、キチンとやろうなんて、疲れ果てるだけです。 パートナーにお互いの感謝の気持ちを伝えることは大切ですが、そこに「本当は女の私がやるべきことなのに、手伝ってくれてありがとう」という気持ちが入っているとしたら、それはやはりある価値観に囚われてるのかもしれないなと思います。

その昔、「俺(夫)の給料で食べていけない訳でもないのに、仕事をしたいのはお前(妻)のわがままなんだから、家のことをちゃんとやってから仕事しろよ」なんていう男性が本当にいたのです。今はさすがにいないと思いますが…。でも、口に出さないけれど、そういうDNAって時々感じること、ありますよね。

そんな流れからか、時間短縮勤務や育児休暇、介護のための制度、テレワーク等が、女性向けのものだと、その制度を作った側も使う側も思い込んではいないでしょうか?男性が使いたいと言った時に、人事や周囲の反応はどうでしょうか?女性の側も、夫と対等に分担することに抵抗があるのではないでしょうか。もしかしたら、夫婦が本当の意味で分担できれば、ママさんもフルタイムで働いたり、残業だって出来るのではないでしょうか?(それを、無理してでもやるか?は別の議論ですが)。

管理職の問題は、「これまでの管理職のあり方」や「仕事のやり方」を疑うことも必要です。

今の流れは、新しい管理職像を作るチャンスなのです。

工業化時代から、仕事の内容もやり方も変わってきています。でも、意外なまでに管理職のイメージって変わってないですよね。今の時代に、管理職に求められる役割は何か?を改めて考えて、新しく多様な管理職像やマネジメントスタイルを作り出すことは進んでいるでしょうか?

女性の管理職候補の研修の背景に、「女性社員は、男性みたいに先輩からマネジメントについて学ぶ機会も少なくて、仕事のやり方とか、よくわかっていないようだから、これを機会に教えてやろう」という考えがないでしょうか?これは、これから生まれてくるはずの多様性を打ち消すようなものです。「管理職に魅力を感じない」と思っている参加者を説き伏せるよりも、もっと彼らの真の声を聴いて、組織側が変わるとか、逆転の発想で生まれてくるものはないでしょうか?

同様にリーダーシップのあり方も一つでは無いと考えています。

これから一般的になるかもしれないリモートワークを成功させるには、まずチームの1人ひとりの仕事を見える化することが必要です。その上で、誰が何を達成したら、チームのミッションが完了するのか?を明確にすることがリーダーには求められます。また、リモートだからこそ、チームを構成する個々の役割や関わり方が重要になってきます。 管理職やリーダーという立場の人が発揮するだけではなく、1人ひとりが自分がコミットする日々のタスクや時間の管理を含めて、自分自身に対してリーダーシップを発揮して、チームメンバーにどのような貢献しているか?を真剣に考えることができる、そんなリーダーシップが必要なのではないでしょうか?

以上がver.2.0。

そして、これに続くものが、「人生」という観点で、生きる要素の一つとして働き方を見直す段階(ver.3.0)だと私は考えています。

これについては、私自身がこの段階のまだ真っ只中で実験中の状態なので、まだ仮説ではありますが、ここからは「私視点」で書きたいと思います。

「仕事をする」目的は、生活するためのお金を稼ぐということがベースにあります。これは、本当に大切なことで、まずは食べていけないことには、幸せも何も始まりません。

特に男性は、「家族を養うために、自分が頑張って働くのが重要な役割」と思っている人が多いと思います。「仕事のやりがい」なんてものは贅沢で、どんなに辛く理不尽なことがあっても、組織の中では自分を抑えて、耐えて生き抜く競争が仕事なのだという、酷しい男性的な働き方は、もっと見直されるべきだと思っています。

仕事には大変な面もありつつ、一方で、他では得られないような充実感や多幸感が得られることも事実です。

子育てとはまた違う種類の、ゾクゾクするような達成感があるのが仕事です。

私自身も実際に「子育てをやりながら、仕事も手抜きをしないで一生懸命にやって、大変な苦労をしながらも、仕事で認められた時の充実感」を何度も味わい、正直なところ、それは病みつきになる快感でした。そして、もっともっと新しいチャレンジングな仕事を引き受けて、頑張る…というのがこれまでの私の姿でもありました。

そんな私が、半年前に自分自身の人生のシフトチェンジをしました。

仕事の面白さ、という目に見えない糸に絡め取られている自分がいることに気づいたからです。

そして、後に続く人たちに対して、これまでとは少し角度の違うメッセージを伝えたくなったのです。

この心境の変化をわかりやすく言えば、少し前に話題になった「人が死ぬ前に後悔する20のこと」という記事がヒントとも言えます。 末期の病気で余命がわかっている人たちから、看護師さんがヒアリングしてまとめたレポートが元になっているそうです。

  1. 他人からどう思われているかを気にし過ぎなければよかった

  2. もっと多くのことを達成しておけばよかった

  3. もっと本心を伝えておけばよかった

  4. もっと自分を出せばよかった

  5. もっと自分の情熱を追いかければよかった

  6. 最後の会話が口論じゃなければよかった

  7. 子供たちに自分の価値観を押しつけなければよかった

  8. もっと「いま」を生きればよかった

  9. あんなに働き過ぎなければよかった

  10. もっと旅をしておけばよかった

  11. 他人の意見よりも自分の感性を信じればよかった

  12. 自分自身をもっといたわっておけばよかった

  13. もっと新しいことに挑戦すればよかった

  14. もっと時間があればよかった

  15. 取り越し苦労をしなければよかった

  16. もっと感謝をしておけばよかった

  17. もっと家族と一緒に時間を過ごせばよかった

  18. 自分自身を悲観的にとらえていなければよかった

  19. もっと他人のために行動をすればよかった

  20. もっと幸せを感じていればよかった

この20項目を初めて見た時、とても心が動かされました。多くの項目で、このまま行ったら、間違いなく後悔する生き方を私自身がしていたからです。そして、自分の人生をいつか見直さなければ!と思うようになりました。

人事という立場から、定年退職を控えた先輩方と深い話をする機会もありました。その時に聞く話の中には、この20項目に近いような感想もよくありました。

私自身は、まだ定年は少し先ですが、2年前に家族が長期の入院生活を余儀なくされた経験がきっかけとなり、一足早く、このver.3の境地に入れたと思っています。

これまでの自分の子育てについて、いろいろな思いがよみがえってきたのでした。

保育園児だった15年位前。集団生活に慣れなくて、ずーっと泣きっぱなしだったのを先生に託して、心を鬼にして仕事に向かった自分。

「あー、こういう大切な仕事の日に何で熱を出すんだろう」と、体調不良を恨めしく感じていた自分。

心の奥では、「子どもともっと一緒にいたいけれど、母である前に社会人として仕事をちゃんとやりたいのなら、何かを犠牲にしなければならない」と思っていた自分。

全部が間違いではなかったけど、心の奥に封印していた本当の気持ちがムクムクと出てきたのです。やり直せるところは、今からでも遅くない!という気持ちです。

それは女性としての本来の役割だとか、母性だとか、そういうことではなくて、簡単に言えば

「働きすぎた」

「人生の豊かさよりも仕事を優先しすぎた」

かもしれない…という気持ちです。

「仕事とプライベートをバランスさせる」という意味での「ワークライフバランス」ではなく、「仕事は、人生のごく一部のパーツに過ぎないのに…なんで、あんなに優先順位が高いと思い込んでいたんだろう…」ということです。

人には「人生」というそれぞれに与えられた時間と機会があります。 でも、実際に何年あるかなど、本当はわからないのです。それなのに、80年は生きるだろうと思って、本当にやりたいことを先に取っておくような生き方。「今の人生」を大切にしないのも違うなと感じたのでした。

これが、私に足らなかった部分だったのです。

例えば、父親でも、母親でも「子どもともっと一緒にいたい」と強く思った時には、我慢をしないで、テレワークを選んで、家にいれば良いのです。 もしそういう働き方が許されない職場であれば、思い切って仕事を変われば良いのです。

最近、20代、30代の人たちと深い話をする機会がありました。

彼らは、特に大きな会社の中では、まだあまり大きな発言力がないせいか、普段は会社や年上の人の前では声に出しては言わないかもしれません。

でも、よく話を聞くと、この世代は男女共に家事や子育てが本来女性の仕事だと考えている人は少ないようです。

また、共働きは当たり前で、仕事にも責任とやりがいを持ちたいけれど、パートナーや家族のための時間も大切にしたい、自分らしさを失わない生活をしたいと考えている人が多いことを知りました。

中には、夫と妻が「家計を支える人」と「子育てと家事担当をやりながら自分のやりたいことをやる」みたいな役割を交代してやっているというカップルもいました。

つまり、ver.1.0 → 2.0と進んできたのは、40代オーバーの世代で、もっと若い人たちは初めからver.3.0で、すでに進化系となっている人がいることもわかりました。

そうなると、最近のダイバーシティ関連のシンンポジウムが訴えているポイントそのものが、やや遅れ気味な部分があるのかもしれないな…と思ったわけです。

シンポジウムなどのパネリストの多くは、一つの企業に長く勤めることを前提とした働き方をしている人が多く、「ロールモデル」として登場する人たちも、既存の管理職像に自分を近づけるような働き方をしているワーキングマザーだったりするからです。

新聞社などが主催でシンポジウムをやるとなると、視点がどうしても企業寄りで、「転職を前提としたキャリアデザイン」を前面に打ち出すというのは難いという面もあるのかもしれませんが。

もし、何も縛られない立場で、若い世代の人に何かメッセージを送るとしたら、「自分の人生を本心ではどう生きたいのか?」というテーマで考えて、働き方を選んで欲しいと思っています。

何歳になったら結婚して、何歳になったら子どもを作って、何歳になったら家を買って…みたいな先輩世代の生き方は、これからは当てはまらない可能性が高いのです。

だから、ロールモデルを求めずに、自分たちが思う方法で自由な発想で社会の仕組みを変えてみて欲しいです。

私自身も、出来るだけこの「20の後悔」を反転させていくことをトライしようと思っています。

実は今も少しずつスタートさせているのですが、9月からもう少し体系的にこのテーマの掘り下げに取り組んでいこうと思っています。

もし、ご興味あれば、またお話しましょう。 f:id:kaitochicap:20160629174208j:plain