カイトチカの日記

Life Solution Energyとして、エナジャイズする記事をお届けします

人事のプロとしての「らしさ」。でも、「らしくない」のも大切。

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少し前に、いろいろな会社の人事担当者の方が集まる会で、ファシリテーターをさせていただいたことがあります。

キーワードは、「ダイバーシティ、キャリア、人生」。

私が会社員を辞めた今でも、自分のテーマにしていることです。

業種、役職、男女などもバラバラで、人事経験が私よりもずっと長い方もいらっしゃるような会でしたが、 初めて会った方たちが、ディスカッション出来るように共通の前提となるようなお話をさせていただいた後、グループに分かれて意見交換という流れでした。

参加者の方から聞かれた感想、気づきとして出た点はこんな感じです。

・そもそも「ダイバーシティ」という言葉はよく聞くけれど、本当の意味はわかっていなかった(女性の子育て支援とイコールだと思っていた)。多分、ちゃんと理解している人はあまりいないのでは。

・働くと言うことは「会社に雇われること」だと思い込んでいた。

・キャリアって、昇進・昇格の話だけでは無いということ、人によって捉え方が違うと気づいた。

・会社員のキャリアって、上司や会社によるところが大きく、自分はそれに合わせるイメージ。自分らしさの発揮は二の次だと思っていた。

・若いうちは転職を考えたけれど、今は慣れた環境から抜けられない。定年後も考えなくてはいけないけれど、よくわからないので後回しにしている人が多い。

・「女性活躍推進」「ダイバーシティ推進」みたいな流行りは、人事業務のプラスアルファの負担になっていて、内心、迷惑だなと思っていた。

・本当の本当の本音で、女性活躍をやろうと思っている会社ってどの位あるのか?本音では、担当業務だからやっている感じ。

・「女性活躍」という言葉そのものに抵抗を感じます。(男女、年代問わず)

・・・・・などなど。

最後の方は、段々本音が出てきて、結構面白かったです(笑)。

これって、人事担当者のみならず、働いている方にも共通する感想かもしれませんね。

私自身も、ディスカッションを聞いていて、幾つかの気づきがありました。

特に面白いな…と感じたのは、次の2つの点です。

  1. ダイバーシティ」とか「女性活躍」とか、(それぞれの組織で違いがあっても良いと思いますが)制度などの策定前に言葉の定義についての議論はほとんどされていない。「キャリア」「ライフプラン」みたいな言葉も同様です。前提が曖昧なままだからか、いざ施策を作ったけれど、社員への説明はもちろん、自分自身でも腹落ちしきれていないようでした。

  2. 人事の経験が長い方ほど、「人事とは会社視点で考えなければいけない」という気持ちが強い。それが「プロの人事パーソンらしさだ」と思っている。それに比して、現場や他部門から人事に異動して日の浅い人は、「まだ、社員としての視点から抜けきれず人事らしくなりきれない」と思っているように感じられました。

「女性活躍推進」という言葉に抵抗を感じる…という意見も多く聞かれたのですが、「それについて、人事内や経営、社員と話をしましたか?」と質問すると、「いえ、もうやると決まっていたことなので」との答えが殆どでした。

私自身、以前の会社で「ダイバーシティの推進が必要だと思います!!」と言い始めた10年位前には、周囲の人の殆どが「それ何?」という状態だったので、説明を求められ、わかってもらえるまで議論をし、説明も工夫しました。そして、その過程で、自分でも「本当の意味や目的は何だろう?」ということを考え、実際の様々な経験を通じて、自分の考えにも何度か修正を加えながら今に至っています。

でも、新しい施策として担当者に降ってきたこと、担当を引き継いだ人にとっては、どこか「やらされ感」「既存の業務という意識」があって、自ら定義を深堀りをしない場合が多いのかもしれないな…と思いました。

また、2番目の「人事としてのあり方、スタンス」。現場出身で人事に異動した人と、入社以来殆ど人事みたいな人にはギャップがあるものです。それゆえ、人事内でディスカッションになっても、現場出身組はどこか自信を持ち切れないところがあったり、人事畑の人は「会社としての見方」が強かったりで、社員の立場から離れていってしまう。そんな場面も実際に見てきました。

どちらが正しくて、どちらが間違っているということも無いのですが…。

個人的には、「社員の幸せ」を願わない人事(=会社)というのは有り得ないと思っています。その会社や組織で働いている人が、何らかの「幸せ」を感じられる環境づくりをするのが人事の仕事なのだと思っています。

その上で、もし、大切にしなければならない「人事らしさ」があるとすると、それは 「人を大切にする」ということに尽きると、私は思います。

  ■ 社員の声に真摯に耳を傾ける

  ■ 秘密を厳守して、公平性を保つ

  ■ 法律、労務、制度などについての正しい知識を持っている

  ■ 給与、福利厚生、異動、採用、育成などを、正確に滞りなく迅速に対応する

みたいなことも、人を大切にするための重要な要素だと思います。

一方で、人事が社員のための施策や制度を作り、実行できる立場なのだとしたら、「今まで通り」ではいけないと思っています。

私が人事に関わった、ここ10数年の間でも、「ヒト」をめぐる環境や考え方は随分大きく変化しています。

例えば、育成は、会社の規格に合った人材を一律に育てることから、その人の能力や志向性を見極めて、それぞれに相応しい方法で育てるというように変わっています。

仕事の進め方にしても、上の人の意向を察知して、その実現に向けて自分の考えを封じて働くというよりも、下の人でも闊達に意見を言えるよな職場が良いとされています。経験豊富な人が考えつかないことを経験の浅い人に提案させ、上司がそれをサポートするというような進め方も増えています。同じ部署の人だけでプロジェクトを組むよりも、異能人材を職場横断的に集めたプロジェクトの方が発想緑豊かなアイデアも湧き、生産性も高いという事例も沢山あります。そうなってくると、一律ということは難しく、既存の自己申告制度、社内FA制度やOne on Oneなどを含む面談などに実効性をもたせて、社員の一人ひとりのことを人事や上司がもっと積極的に深く知る必要が出てきています。

このような状況からしても、これまでの「人事のしきたり」にとらわれず、「人事らしくない」スタンスや考え方ができる人も必要だなと思っています。

「らしくない」ことをするためには、社外に勉強に行ったり、社外の人的ネットワークなどから得られる新鮮な情報も役立つことでしょう。

私の周りにも、将来「人事で仕事をしたい」という人が結構います。

もし、今後、人事で仕事をするチャンスがある方には、この「らしさ」と「らしくない」ことを頭において、社員が「幸せ」を感じられる…そんな仕事を是非していただきたいと願っています。

正直に言うと、私が現場にいた時は、「人事って地味な部署だな…絶対に縁が無さそう…」と思っていたのでした。月日が経って、何の因果か今ではスペシャリストみたいに言ってもらえるので、それには内心、申し訳なさがあります(笑)。でも、実際にやってみて、とても面白い仕事だと思っていますよ!

今年の後半は「幸せ」について、掘り下げています。

その話はまた別の機会に!

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